【知っておきたい着物のTPO】カジュアル着物とフォーマル着物の違い

着物は日本の民族衣装です。

昭和の中期頃までは、着物が「日常着」として着られていましたが、洋服が主流となるにつれて、着物は「特別な日」にだけ着る衣装になってきました。

令和の今では、「着物の種類や、帯・小物の合わせ方、着用マナーなどがよくわからない…」と不安に思われる方が増えています。

安心して着物を楽しんでいただけるように、「着物の基本知識・マナー」について、詳しく解説します。

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カジュアル着物とフォーマル着物

着物には、大きく分けると「カジュアル着物」と「フォーマル着物」があります。まずはこの分類をしっかり覚えることが大切です。

カジュアル着物はフォーマルシーンには着用できません。逆にフォーマル着物もカジュアルシーンには向きませんが、一部のフォーマル着物は、帯と小物合わせにより「カジュアルダウン」も可能です。

「カジュアル着物」ってどんな着物?

カジュアル着物は、普段着の着物のことです。

ショッピングや親しい友人とのランチ、お稽古事など、普段のお出かけの時に着用します。

・浴衣(ゆかた)

浴衣はもともと「パジャマ」だったので、着用できる場所・シーンがやや限られます。とはいえ、近年は、夏の「カジュアル着物」として、すっかり定着しています。

・小紋(こもん)着物

生地全体が同じ柄の繰り返しになっているのが特徴です。織り上がった生地に柄を入れる「後染め(あとぞめ)」の着物です。

正絹(しょうけん・シルク100%)の着物のほか、最近ではポリエステル製の「洗える着物」も人気です。

ごく細かい模様を染めた「江戸小紋(えどこもん)」は、例外的に「フォーマル着物」としても着用できます。

・紬(つむぎ)の着物

先に染めた糸を使って模様を織り出した着物です(先染め・さきぞめ)。元々は、くず糸を使った素朴な織物でしたが、現代では、貴重な職人技の紬が「高級品」として扱われています。

「カジュアル着物」は自由に楽しんでいい

「カジュアル着物」の場合は、堅苦しい決まり事に縛られず、好きな着物を着て自由に楽しむことができます。

ただし、季節ごとの衣替え(ころもがえ)や、お出かけ先による向き・不向きなどがあります。

例えば、浴衣は夏用の着物ですので、初夏から初秋頃までは着られますが、それ以外の季節には着用しません。

「フォーマル着物」ってどんな着物?

「フォーマル着物」は、いわゆる「礼装(れいそう)」の着物で、フォーマルシーン(オケージョンシーン)に着用します。

正絹(しょうけん・シルク100%)または、絹の代用であるポリエステルで作られており、「後染め(あとぞめ)」の着物のみです。格の高い「フォーマル着物」の場合は、縫い目をまたいで柄がつながる「絵羽(えば)」模様になっています。

どんなに高級品でも「先染め(さきぞめ)」である紬の着物は、フォーマル着物としては着用しません。

「フォーマル着物」には、最も格の高い「第一礼装(正礼装・せいれいそう)」から「準礼装(じゅんれいそう)」まで様々なタイプがあり、着用する人の年齢や立場によって使い分けます。

「紋(もん)」の数によっても「格」が変わります(多いほど格が高い)ので、お仕立てされる場合には注意が必要です。

・振袖(ふりそで)

振袖は「未婚女性の第一礼装(正礼装)」です。

袖丈が長いのが特徴で、花嫁衣裳の「大振袖」は120cmほど、成人式用の「中振袖」でも100cmぐらいあります。

格の高い「フォーマル着物」の特徴である「絵羽(えば)」模様になっています。

・留袖(とめそで)

留袖は、「既婚女性の第一礼装(正礼装)」です。「黒留袖」は、新郎新婦の母や親族の女性が着用します(格が高すぎて、他にはほとんど出番がありません)。

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黒以外の「色留袖」もあり、本来は「既婚女性」の礼装でしたが、現在は未婚女性も着用できます。

留袖の最大の特徴は、裾(すそ)にだけ模様が入っているところで、振袖と同様に「絵羽模様」になっています。

・訪問着(ほうもんぎ)と付け下げ(つけさげ)

「訪問着」は、未婚・既婚を問わず着られるフォーマル着物で、「準礼装」にあたります。

訪問着も「絵羽模様」ですが、留袖と異なり、裾以外にも柄が入ります。振袖の袖を短くすれば「訪問着」として着用できます。

なお、訪問着にカジュアルな帯を合わせると、「カジュアル着物」としても着用できます(カジュアルダウン)。

「付け下げ」は、訪問着に準じる着物ですが、訪問着よりも柄が控え目で「絵羽模様」になっていません。

・色無地(いろむじ)着物と江戸小紋(えどこもん)

「色無地着物」は、基本的にはカジュアル着物ですが、礼装用の帯・小物を合わせれば、「訪問着」と同格の扱いになります。

「江戸小紋」は、ごく細かな小紋柄で遠目には無地に見えるので、色無地と同等の扱いで着用できます。

フォーマル着物は「着用ルール・マナー」が決まっている

フォーマルシーンは、成人式・結婚式・卒業式/入学式など、厳粛な儀式・儀礼の場です。

他にも多くの出席者・参列者がいますので、フォーマルシーンにふさわしいルールとマナーを守る必要があります。

ちょっと面倒くさく感じられるかもしれませんが、きちんとTPOを守ることで、お祝いの気持ちや他者への配慮を示すことにもつながります。

・フォーマル着物には礼装用の袋帯(ふくろおび)と小物を合わせる

「正礼装」である留袖や振袖には、カジュアル向きの帯(名古屋帯や半幅帯)を合わせることはできません。

「準礼装」の訪問着・付け下げ・色無地などは、カジュアル向きの帯・小物を合わせて、カジュアルシーンに着用することもできます。

・「白足袋」に礼装用の草履が原則

フォーマルシーンでは、下駄やカジュアル向きの草履、ブーツ、パンプスではなく、礼装用の草履を使用します。カラー足袋や柄物の足袋も避けましょう。

ただし、成人式だけは、よりカジュアルな雰囲気で自由なスタイリングを楽しめるようになっています。

カジュアル着物とフォーマル着物の違いについてまとめました。

谷屋呉服店では、「前結びの着付け教室」を開講しています。着付け教室のレッスンでは、着物や帯の着方だけでなくTPOやマナーの知識も身に着きます。

無料体験レッスンも随時行っておりますので、お気軽にご参加ください。

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