【知っておきたい着物TPO】着物の「紋入れ」について

留袖や訪問着などの「フォーマル着物」には「紋(家紋)」が入っている場合があります。

着物の格と種類によって、「紋を入れる・入れない」「いくついれるか(一つ・三つ・五つ)」という違いがあり、ちょっとややこしいと思われるのではないでしょうか。

今回は、着物の「紋入れ」に関する着物TPOについてお伝えいたします。

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着物の「紋(もん)」とは?

男性の着物にいれる「紋」は約3.8cm、女性の着物に入れる「紋」は約2.1cmと、男女でサイズも異なります。

男性の場合は、ご自身の家に伝わる家紋(定紋・じょうもん)を使います。父から子へ伝えられることになります。

女性の場合は、地域や家の習わしによって、紋の入れ方が様々です。

・実家の「紋」を入れる(ご結婚前に着物を仕立てる場合など)

・嫁ぎ先の家紋を入れる(家族で同じ紋にそろえる)

・家に伝わる女性専用の「替え紋」を入れる

・母から娘、孫へ「女系」の紋として、実家の「女紋」を入れる

「女紋」は、千葉県や関西、瀬戸内などに伝わる風習で、その他の地域ではあまり見られません。

女性が着物に紋を入れる場合には、お母様(お義母様)やおばあ様などに確認してみてください。

家紋がわからない・特にこだわらない場合は、「通紋(つうもん・とおしもん)」である「五三の桐」紋をどなたでも使用できます。レンタル着物などにもこの紋が入っています。

また、紋の入れ方には、「染め抜き紋」と「刺繍紋」があります。

染め抜き紋は、刺繍紋よりも格式が高いとされています。

着物の種類と「紋入れ」

紋を入れるのは、原則として「フォーマル着物(礼装)」のみです。

カジュアル着物である小紋や紬には紋を入れません。

紋の数は、「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」があり、紋の数が多いほど格が上がります。

五つ紋は、背中、両胸(抱き紋)、両袖(後ろ側)に入れます。三つ紋の場合は、背中と両袖です。一つ紋は、背中だけに入ります。

「五つ紋」を入れた着物は、「正礼装」となります。

そのため、黒留袖と喪服には必ず「五つ紋」を入れます。

振袖にも、かつては五つ紋を入れていました(アンティークの振袖などでは、よく見かけます)。現代では振袖に紋を入れる方はあまりいません。一目で「未婚女性の第一礼装」とわかりますので、紋入れの必要性がないのと、紋を入れても柄にまぎれて目立たないからです。

「三つ紋」は「五つ紋」より格の下がる「準礼装・略礼装」となります。色留袖や訪問着に入れることができます。

「一つ紋」は「三つ紋」よりもさらに格が下がりますので、比較的気軽に着用できます。一つ紋は、「訪問着、付下げ、色無地」などに入れるのが一般的です。

紋をいくつ入れたらいいの?

色留袖の紋入れ

「五つ紋」の色留袖は、「黒留袖」と同格の扱いとなります。

格が高すぎて着用シーンが限定されるため、色留袖に「五つ紋」を入れる方はそれほど多くありません。

着用シーンとしては、結婚式で新郎新婦の親族(姉妹など)として出席する場合や、叙勲・祝賀会に出席する場合などがあります。

色留袖に五つ紋を入れる場合には、黒留袖と同じ「比翼仕立て」(最初から白い重ね衿「比翼」をつけた仕立て方)にします。

「三つ紋」「一つ紋」の色留袖は、「準礼装」の扱いとなりますので、「訪問着」と同じような感覚で、お子様の七五三や卒・入学式などに着用できます。

結婚式にゲストとして出席される場合にも着用できますが、親族と間違われやすいので、訪問着を選ぶ方が多いようです。

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訪問着の紋入れ

訪問着には、「三つ紋」または「一つ紋」を入れるか、「無紋」とすることもできます。

紋の入った訪問着は「準礼装」として、お茶会などフォーマルシーンに向く装いとなります。

訪問着は合わせる帯によって、カジュアルに着こなすこともできますので、幅広いシーンで着用するために「無紋」とする方が多くなっています。

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色無地着物の紋入れ

色無地着物は、基本的には「カジュアル着物」に分類されますが、「一つ紋」を入れることで「準礼装」とすることができます。

お茶会などに出席される方は、「一つ紋」の色無地をお持ちになっていると重宝します。

一つ紋は比較的気軽に着られますので、お子様の七五三のお詣りや、入学式・卒業式などにもおすすめです。

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なお、細かな型染め模様が入っている「江戸小紋」の着物も、色無地と同様の着こなしが可能ですので、セミフォーマル向けに「一つ紋」を入れることができます。

紋入れについて迷ったら

近年は、紋付の着物を着用するシーンが少なくなっており、着物の紋入れについて迷われる方が多くなっているようです。

訪問着や色無地着物は、セミフォーマル・カジュアルのどちらにも着用できるのが大きなメリットです。

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紋を入れることで着用シーンが狭まる可能性があるため、あえて「無紋」とする方も増えています(地域差などもあります)。

そういう意味では、紋の有無よりも、帯合わせの方が「セミフォーマル」「カジュアル」の使い分けにおいて重視されると言えます。

訪問着や色無地を「セミフォーマル(準礼装)」とする場合は、礼装用の袋帯や小物類を選んで、品格ある装いにしましょう。

「カジュアル着物」としてお召しになる場合には、名古屋帯やしゃれ袋帯を合わせて、自由な着こなしを楽しめます。 これから訪問着や色無地着物を仕立てる時に、紋を入れるかどうか迷ったら、お気軽に谷屋スタッフにご相談ください。