京都の呉服メーカーの中でも、『モダンの老舗(しにせ)』として知られる樹華屋(きはなや)の着物をご紹介します。
樹華屋の着物が初めて発表されたのは40年ほど前です。以来、舞台衣装などを多く手がけ、テレビや映画などにも多数起用されています。
伝統を守りながらも、「その時代を感覚でとらえ、品格を大切にし、自分らしい着こなしを求める」ものづくりに挑戦するメーカーです。
「クラシックライン」「光悦 辻が花」「花びらちらし」「すり霞」「美人GATA」の各ブランド展開のほか、京友禅の染匠(せんしょう)「田畑喜八」とのコラボ作品も話題です。
樹華屋の着物で「モダン」を着こなす
『クラシックライン』
樹華屋の着物は、京都の「モダン」を感じさせます。
都会的・現代的でありながらも、古都に脈々と受け継がれる伝統美と品格を決して失いません。
そんな樹華屋の着物として、40年の間愛され続けるロングセラーデザインが「クラシックライン」です。
そのコンセプトは、「帯、小物の色合わせの妙で着物ではなく着る人を主役にする」こと。
着物の染屋としては珍しく、帯の機屋(はたや)としても樹華屋のオリジナルラインを製作しています。
はっとする色遣いや大胆な柄も多いですが、驚くほどしっくり着こなせるのは「モダンの老舗」ならではのデザインの妙と言えるでしょう。
「小物との色合わせ」にこだわった全身スタイルを提案する樹華屋では、帯締めや帯揚げもトータルプロデュースしています。
『光悦 辻が花』の世界
「辻が花(つじがはな)」とは、「絞り(しぼり)染め」と「描き絵」「摺箔(すりはく)」「刺繍(ししゅう)」などを組み合わせた技法のことを言います。
安土桃山時代にまでさかのぼる古い技法ですが、江戸時代初期に友禅(ゆうぜん)染めが開発されると急速に衰退しました。
一度は途絶えてしまった幻の「辻が花」は、昭和初期~中期に染色家の手で復元され、たいへんな評判を呼びました。
樹華屋の「光悦 辻が花」は、枯れかけた色彩に、日本特有の美意識を感じさせる逸品です。
極上の色を着る『花びらちらし』
樹華屋のこだわりがつまった『花びらちらし』の着物は、最高級の白生地を表裏四回重ね染めして完成させる「極上の色」。
最後の仕上げに「花びら」を描きこみます。
・色無地着物として
・付下げ着物として
・究極の「飛び柄小紋(こもん)」として
一枚で三役をこなすユーティリティの高さも特徴の一つです。
カジュアル着物である「小紋着物」から、セミフォーマルシーン/フォーマルシーンに活躍する「色無地着物」「付下げ着物」としても、帯合わせや小物合わせで自在に楽しむことができます。
幅広いシーンに着用できますので、お気に入りのカラーを見つけて1枚お持ちになれば、たいへん重宝します。
門外不出の染め技『すり霞』
「江戸小紋(えどこもん)」は江戸時代に武士の裃(かみしも)に使われていました。ごく細かい型染め文様は、江戸っ子の「粋(いき)」を感じさせます。
遠目には無地に見えるほどで、小紋着物としては例外的に「フォーマル着物」としても着用できます。
そこに、門外不出の高度な技術で「霞染め」を施しました。
繊細で美しいグラデーションで「洗練された色彩の世界」を楽しむことができます。
『美人GATA』
着物の伝統的な染め技法の一つに、「型染め」があります。
緻密な職人技で彫られた「型紙」を使い、丁寧に色を染めていきます。
そんな日本の型紙が明治期以降にヨーロッパに紹介され、1900年前後に世界的な潮流となった美術運動「アール・ヌーヴォー」にも多大な影響を与えることになりました。
花や植物と自由曲線などによる「アール・ヌーヴォー」の優美なデザインは、日本古来の美意識に通じるものです。
その頃の型紙には、「美人な型紙」と言われるものが数多くあります。
樹華屋の『美人GATA』は、そんな「美人な型紙」を使った優雅な作品です。
「田畑喜八」コラボ作品も必見
「田畑喜八」は、京都有数の「染匠(せんしょう)」に受け継がれる名跡です。
その歴史は、江戸時代・文化文政年間まで200年ほども遡ります。
当代である五代目田畑喜八の祖父にあたる三代目田畑喜八は、友禅染で初の「人間国宝」に指定されています。
京友禅は、高度な技術を持つ職人集団による「分業制」を特徴としています。
古くから職人技を受け継いできた「京都」だからこそ可能な制度と言えます。
そんな京友禅の世界で、意匠デザインと総合プロデュースを担うのが「染匠」です。
田畑家では、お客様のことを「華主(かしゅ)」と呼びます。「華の主であるお客様が主役」という気持ちを表しています。
「着る人を輝かせるための着物」というコンセプトは、樹華屋のものづくりとの相性の良さを物語ります。
田畑喜八の京友禅は、「和の色彩」にこだわります。
現代人の求める色彩を常に追求しますが、決して安易に流行を追うことなく、「格調と品格のある色」を生み出しています。
田畑喜八の真骨頂とも言えるのが、伝統の茶屋辻(ちゃやつじ)文様と藍染の濃淡による表現です。
茶屋辻文様では、水辺の景色や建物を俯瞰的に(空からのパノラマのように)表現します。涼し気で落ち着いたデザインは、着る人を優雅に見せてくれます。
極細の糸目糊(いとめのり)と藍の濃淡による友禅染は、まさに「超絶技巧」の逸品です。
「樹華屋」の着物を谷屋展示会で
香取市の谷屋呉服店では、定期的に展示会を開催し、全国有数の着物メーカーが手がける着物や帯をご紹介しております。「樹華屋」の着物も今後の展示会でご紹介させていただく予定となっておりますので、その折にはぜひ会場へお立ち寄りくださいませ。