世界的友禅作家・千地泰弘さんの着物

千地泰弘(ちぢ やすひろ)さんは、日本国内にとどまらず世界的にもその名が知られている友禅作家です。

着物や帯の製作活動だけでなく、世界的なデザイナーとの共同製作や、国内外でのファッションショーなど多彩な活動をされており、世界中のファンを魅了しています。

「鬼才」の友禅作家とも評される千地泰弘さんは、「テキスタイル」としての友禅染めの魅力と、着物の素晴らしさを世界に向けて発信し続けています。

世界一周の旅から友禅作家へ

千地泰弘さんといえば、「友禅作家」の枠にとどまらないワールドワイドな活躍が有名です。

世界的な活動の原点は、仏教画家の父・千地琇也氏の助手として携わったロサンゼルス西本願寺の大壁画の製作でした(1969年~)。

アメリカ・ロサンゼルスでの3年間の製作活動の後、世界一周の遊学を経て帰国した千地泰弘さんは、京都で友禅染めと出会います。

アルバイトで始めた友禅染めに魅せられた千地泰弘さんは、洋服地を使った作品を発表し、瞬く間に大反響を呼びます。

それまでの友禅染めは、着物や帯の生地を使った作品・製品しかなかったため、洋服地を使った作品は、「テキスタイル」として活用の幅を広げる結果となりました。

ファッション・デザイナー三宅一生氏との共同により、ベルギー国立バレエ団の衣装を「友禅染め」で製作すると、千地泰弘さんの名前(YUZEN CHIJI)と「友禅染め」の素晴らしさが、世界中に発信されることになりました。

千地泰弘さんのファンには、エリザベス・テイラーやグレース・ケリー、スペインのアルバ公爵夫人など、世界の著名人が名を連ねます。

当時、残念ながら日本国内では着物人口が減り、着物産業が徐々に衰退していく時期にありました。

そんな日本国内でも、「友禅作家・千地泰弘」の世界的な活躍が話題を呼び、友禅染めの素晴らしさが再認識されるきっかけとなりました。

その後も、着物や帯の製作・監修のほか、歌舞伎やオペラなどの舞台衣装の製作から、国内外でのファッションショーの開催まで、幅広い分野で活躍されています。

1973年に友禅染めと出会った千地泰弘さんは、2023年に作家活動50周年を迎えられました。

「着物の素晴らしさ」を世界に発信し続ける千地泰弘さんの創作活動から、今後も目が離せません。

「和魂洋才」の友禅染め

世界的に活躍する友禅作家・千地泰弘さんの着物は、その美しい色彩や繊細な染め模様が見る者の目を引き付けてやみません。

また、決して枠にはまらない「モダン」かつ大胆なデザインも魅力の一つです。

千地泰弘さんの作品には、伝統的な「古典柄(こてんがら)」のほかに、異国の風景や洋風モチーフなどが描かれることもあります。

「和魂洋才」をテーマとする千地泰弘さんの着物は、どんなに大胆なデザインやモチーフでも決して奇抜にならず、品格ある「着物の美」が表現されています。

着物の素晴らしさは、第一に、その「直線的」なシルエットの美しさにあります。

立体的なパターン(型紙)を使う洋服と異なり、着物は「直線裁ち・直線縫い」で仕立てられるため、最終的な形(=シルエット)が決まっています。

そこに、織りや染めによる表現が加わることで、「着物ならでは」の独特な美しさを生み出します。

伝統的な民族衣装でありながら、着物のデザインは非常に自由度が高く、どんなモチーフも受け入れる「懐の深さ」を持っています。

江戸時代中期頃に開発された「友禅染め」は、輪郭線に「糸目糊(いとめのり)」を置いてから柄を染める技法です。隣り合った模様の色が混ざらないので、それまでになかった緻密な表現が可能になりました。

「友禅染め」の技法を用いることで、「着物」をキャンバスとして、どんな模様でも自由に描くことができます。

特に、振袖や訪問着は、仕立て上がったときに縫い目をまたいで柄が繋がる「絵羽模様(えばもよう)」を特徴としています。

衣桁(いこう)にかけた振袖や訪問着は、着物全体に描かれた「アート作品」のようなデザインも見所の一つです。

その一方で、「着物」はあくまでも衣服としての役割を持つものです。

友禅作家である千地泰弘さんは、実際に着た時に美しく見えることにもこだわります。

平面的な美しさと立体的な美しさを兼ね備えた、千地泰弘さんの作品にぜひご注目ください。

千地泰弘さんの作品は、フォーマル向きの「訪問着」や「留袖」から、フォーマル・カジュアルどちらにも利用できる「色無地着物」、カジュアル向きの「小紋着物」まで、多彩なラインナップがあります。

着物に合わせる帯も、フォーマルシーンのための「袋帯」から、セミフォーマルシーン向きの「しゃれ袋帯」、カジュアルシーンに活躍する「名古屋帯」までが揃います。

「千地泰弘」製作の着物と帯で、唯一無二のおしゃれなコーディネートを楽しんでみませんか?

谷屋呉服店では、TPOに合わせた着物・帯の選び方や、コーディネートのご相談も喜んで承っております。どんなことでもお気軽にお問い合わせください。

千地泰弘さんの着物や帯を谷屋で

千葉県香取市の谷屋呉服店では、全国各地から着物や帯の名品を取り寄せて、ご来場のお客様に紹介させていただく「展示会」を定期的に開催しております。

近々、千地泰弘さんの作品を一堂に会する展示会を開催する予定となっております。

世界的に活躍されている友禅作家・千地泰弘さんの手がけた美しい着物や帯を、実際にお手に取ってご覧いただける貴重な機会ですので、ぜひお立ち寄りくださいませ。