【知っておきたい着物TPO】羽織や道行コートなど「着物用アウター」の着こなしとマナー

2024年の秋は気温が高く、洋服でも着物でも、温度調節が難しい日が続きました。

これからの季節は急激な気温低下も心配ですね。

着物の冬支度には、羽織や道行コートなどのアウターも欠かせません。

今回は、和装用アウターの種類と着こなし方、着用時のマナーなどについてお伝えいたします。

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和装用のアウターにはどんな物があるの?

着物用のアウターには、いくつか種類があります。

それぞれの着用シーンや着用時のマナーなどについてまとめました。

和装用のアウターを検討されている方は、ぜひご参考になさってみてください。

羽織

羽織

羽織(はおり)は、前側が少し開いたつくりになっており、「羽織紐」で左右の身頃をとめて着用します。

もともとは男性専用でしたが、江戸時代後期になり、深川の芸者が着たことで、女性も着用するようになったとされています。

男性の正装は、紋付の羽織と袴を合わせたスタイルですね。男性の礼装用の羽織は黒紋付または色紋付のみです。

女性の場合は、黒紋付、色紋付のほか、絵羽模様の羽織も紋を入れることで「礼装」として着用できます。

昭和50年代頃までは、入学式や卒業式のお母さんのスタイルと言えば、紋付羽織姿が定番でしたが、現在ではすっかり見られなくなりました。

現代の女性用の羽織は、カジュアル向きがほとんどになっています。

羽織は「カーディガン」または「ジャケット」のような役割を果たします。

そのため、室内でも脱がずにそのまま着用することができます。

真冬のアウターとしては心もとないですが、少し肌寒い日には、あると重宝します。

羽織を着るときには、衿の後ろ側を外側に半分に折ります。前側の衿は、自然に外側に開くようになります。

羽織紐をひっかける「輪っか」のことを「乳(ち)」と呼びます。

乳の位置は、帯の上線よりちょっと下ぐらいがちょうどよいとされています。

羽織には、膝下まである「長羽織」と、それよりも短めの「中羽織」があります。羽織丈には流行の変遷がありますが、現代では長羽織が好まれる傾向にあります。

道行(みちゆき)コート

道行(みちゆき)コート

道行コートは、礼装用にもカジュアル用にも着用できるアウターですが、羽織や道中着に比べると、フォーマル向きの印象です。

礼装用には、高級感のある生地で、無地または絵羽柄になっているものを選ぶとよいでしょう。

道行コートは、衿ぐりが大きく開いた形状で、お腹の部分は左右が重なるつくりになっています。

衿ぐりの形はさまざまなタイプがあり、お好みでおしゃれを楽しめます。

道行コートは、あくまでも「コート」(外套)として、屋外で着用します。室内に入るときには、脱ぐようにしてください。

道中着(どうちゅうぎ)

道中着は、着物と同じように、衿を合わせるつくりになっています。

衿の後ろ側を内側に半分に折り、肩から下は自然に開いて着用します。

道中着はカジュアル向きが多い印象ですが、高級感のあるタイプなら、礼装に合わせても問題はありません。

道中着も、道行コートと同様に、室内に入る前に脱ぐのがマナーです。

その他の「和装用コート」

和装用コート

真冬の一番寒い時期には、道行コートを着ていてもちょっと辛いですね。

そんな時は、ウールやカシミアなど洋装用のコートと同様の素材でできた「和装用コート」も着用できます。

着物の衿に添うように作られており、長い袖が収納できるように、たっぷりとした袖が特徴です。

ショール

ショール

正絹(シルク100%)の着物は、保温性が高いため、見た目よりも温かです。

とはいえ、大きく開いた衿元の寒さが気になりますよね。

和装用の防寒アイテムとして、ショールがあるととても重宝します。羽織や道行コート、道中着などの上からつけることができます。

羽毛や毛皮、ベルベット、カシミアなど、様々な材質のショールがあり、和装用に限らず洋装用も使用できます。

ショールをつける時のマナーとして、室内に入るときには外すようにしましょう。

夏用の羽織やコート

夏用の羽織やコート

羽織やコートには、「防寒」だけでなく、「塵除け(ちりよけ)」という目的もあります。

大切な着物や帯の「汚れ防止」のため、また紫外線による「日ヤケ・色ヤケ」から守るために、一年を通して着用できます。

着物と同じように、羽織やコートも、季節に応じて裏地のついた「袷(あわせ)」仕立てと裏地なしの「単衣(ひとえ)」仕立てを使い分けます。

真夏の時期には、「絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)」など、透け感のある夏素材の羽織やコートを着用します。

春先から初夏にかけては、レースの羽織やコートも人気があります。

羽織やコートの着方・脱ぎ方

羽織やコートの袖を無理に引き抜いて、裏返してしまったり、バサバサと腕を振って乱暴に脱いだりするのは、スマートではありません。

羽織やコートを着るときには、脱ぎ着の際にもたつかないように、自然な所作を練習しておくのがおすすめです。

着る時は、羽織やコートを滑らせるように肩にのせ、袖を通します。脱ぐ時は、反対に袖口を手で押さえるようにして、袖を引き抜いてから、身頃部分を脱ぎます。

おしゃれ着としての羽織・コート

着物のコーディネートは、着物・帯・小物類という決まったアイテムがあります。

さらに羽織物を加えることで、より「自分らしい」おしゃれな着こなしを楽しむことができます。

ポンチョやケープのほか、洋装・和装のどちらにも使えるカーディガンなどもありますよ。

いかがでしたか? 着物用のアウターは、防寒目的だけでなく、塵除けやおしゃれのためにも、ぜひ活用してみてください。