京都の老舗『誉田屋源兵衛』の帯

誉田屋源兵衛(こんだやげんべえ)は、江戸中期・元文年間創業の老舗帯メーカーです。

10代目当主である山口源兵衛氏が手がける帯は、素材、技術、意匠のすべてにこだわった究極の「逸品」として、日本国内はもとより海外からも注目されています。

皇室の御養蚕所でしか飼育されていなかった「小石丸」の製品化に取り組むなど、日本の染色技術の活性化にも多大な貢献をしています。

着物愛好家にとって「憧れ」の『誉田屋源兵衛』の帯について、その歴史やこだわりとともにご紹介いたします。

『誉田屋源兵衛』の歴史

京都の老舗帯メーカー『誉田屋源兵衛』(こんだやげんべえ)の創業は、江戸中期の1738年(元文3年)にまでさかのぼります。

初代から6代目までは『矢代庄五郎』を名乗りましたが、山口源兵衛が7代目を継承したのをきっかけに、初代『誉田屋源兵衛』を名乗るようになりました。

1981年に現当主が10代目誉田屋源兵衛を襲名してからは、「帯づくり」に専念しています。

現当主は、素材、伝統的な「織り」の技術、意匠(デザイン)のすべてに徹底的にこだわる「ものづくり」で革新的な帯を次々と発表し、個展も多数開催しています。

1998年(平成10年)、皇室の御養蚕所でのみ飼育されていた「小石丸」が解禁されると、業界内で先陣を切って製品化に取り組み、平成15年の「日経MJ賞」を受賞しています。

10代目誉田屋源兵衛は、「日本を代表する文化人」として、スポーツカー「TOYOTA86」イメージキャラクターも務めました。

海外ブランドや文化人との交流も盛んで、誉田屋京都本社にはハイブランドからの見学者も多く訪れるそうです。

2016年には、英国のヴィクトリア&アルバート博物館に、「永久所蔵品」(パーマネントコレクション)として誉田屋源兵衛の帯が7点収蔵されました(現代に製造された帯としては初)。

『誉田屋源兵衛』のこだわり

誉田屋源兵衛では、「計りて作らず、本物は残りて候」という言葉を家訓としているそうです。

そこには、「儲けを考えていては良い物は作れない」「本当に良い物は時代が変わろうとも価値が高く、継承される」という思いが込められています。

この家訓に従い、誉田屋源兵衛では、素材・技法・意匠のすべてにこだわった帯を製造・販売し続けています。

「売れそうな物」を作るのではなく、時間と手間をかけて丁寧に作られた帯は、「アート作品」にも近い存在として、国内はもとより海外ファンからも熱烈な支持を得ています。

職人技にこだわり抜いた「西陣織」の帯は、重厚で緻密な織りとデザインで、フォーマルシーンにぴったりな風格を持っています。

誉田屋の「工芸袋帯」は一目でわかる上質さと、洗練された意匠性から、着物ファンが一度は手にしてみたい「逸品」と言えるでしょう。

誉座織(ほんざおり)

誉田屋源兵衛の『誉座織』は、機械による「製糸」ではなく、伝統的な「座繰り(ざぐり)」で引き出された糸を使うことで、まるで「空気を包み込んだような」ふくらみ具合を特徴としています。

上質な国産繭と職人さんによる「手仕事」の温かみが感じられる「帯」は、着物ファンにとても人気があります。

楼蘭織(ろうらんおり)

『楼蘭織』も、誉田屋独自の織製技法の一つです。

金属糸を「経糸(たていと)」に通し、櫛織のように織り上げます。よろけたような「織り」が、独特な立体感を感じさせます。

小石丸(こいしまる)の帯

『小石丸』は日本古来の在来種の蚕です。蚕の中でも最も細い糸をはく品種とされ、美しい艶を持ち毛羽立ちにくい上質な絹糸を生産できます。

長年の間、皇室の御養蚕所だけで大切に飼育されてきましたが、規制緩和により飼育が解禁されると、誉田屋が業界でもいち早く商品化に取り組みました。

小石丸を使った帯は、極細の糸で織り上げられており、光沢や手触りに優れています。

発色も良いので、誉田屋の高い意匠性がいかされる極上の帯として、着物ファンに人気があります。

芭蕉織(ばしょうおり)

芭蕉織に使用される「糸芭蕉」は、バナナの仲間である多年草です。

麻よりも繊維が固く、軽くて張りがあります。芭蕉糸で作られる帯は、通気性がよく、夏帯として使用されます。

隙間が多く織られた「羅(ら)」の帯や、浴衣にぴったりな半幅帯などがあります。

誉田屋源兵衛の浴衣

礼装用の重厚な「工芸袋帯」のイメージが強い誉田屋源兵衛ですが、その一方で、大胆でモダンなデザインの高級浴衣も手掛けています。

「浴衣を作る」と決めた10代目に対し、社員からは反対意見が噴出したそうですが、誉田屋ならではの「こだわり」がつまった浴衣は、多くの現代人の心をつかみ浴衣の大人気ブランドの一つとなっています。

誉田屋の浴衣は、綿麻生地を使用した「シャリ感」を特徴としており、幅広の反物なのでデザインによって「男女兼用(ユニセックス)」として使用できます。

10代目も愛用する「破れ格子」など、誉田屋源兵衛浴衣の「代名詞」となっているデザインも数多く、年齢・性別を問わず人気があります。

誉田屋製の『芭蕉織』の夏帯や半幅帯をコーディネートするのもおすすめです。

『誉田屋源兵衛』の帯を谷屋で

谷屋呉服店では、着物ファンの間でも人気の高い「誉田屋源兵衛」の製品を取り扱っております。

一切の妥協を許さず、素材・技法・意匠のすべてにこだわり抜いた『誉田屋』の帯は、量産されることがなく、生涯お手元においてご愛用いただける逸品です。