米沢『野の花染工房』の着物の魅力をご紹介します

野々花染工房の着物

千葉県・香取市の谷屋呉服店では、日本各地の「名産」として知られる着物や帯を多数取り扱っております。

日本全国の染織産地では、ひたむきに伝統技術を守るだけでなく、現代的な感性をどんどん採り入れることで、魅力的な新作を次々と生み出しています。

今回は、そんな「知る人ぞ知る」名産品として、染織の産地・米沢から『野の花染工房』の着物をご紹介いたします。

米沢の染織

山形県米沢市にある『野の花染工房』は、その名の通り、天然の草花を原料とする「草木染」の工房です。

歴史ある工房を営む諏訪家は、現当主の諏訪豪一さんが六代目に当たります。諏訪家初代は、米沢藩主・上杉鷹山公による「藩政改革」で機屋を創業した江戸後期にまでさかのぼります(安政5年・1858年創業)。

上杉鷹山公

染織の一大産地となった米沢の伝統は、困窮する米沢藩の財政再建のため、上杉鷹山公が、婦女子に機織りを奨励したことに由来します。

全国的にも有名な「米沢織」は、現在に至るまで、米沢の主要な産業の一つとなっています。

米沢織の着物は、紅花染や藍染などの草木染でも知られています。

これらの伝統的な「草木染」技法は、明治時代に化学染料が登場してから一度は途絶えてしまいました。

昭和中期以降、米沢にある機屋さんでは、大切に保管されていた資料や学術研究をもとに試行錯誤を繰り返し、貴重な「草木染」を復興することに成功しています。

『野の花工房』の草木染

藍染

『野の花染工房』では、昭和61年から、現当主の父である諏訪好風さんが、貴重な天然灰汁発酵建てによる「正藍染」を開始しました。

現代の藍染は、化学染料や薬品を用いた手法が一般的ですが、天然の原料のみを使用する藍染は「正藍染」として区別しています。

「ジャパンブルー」とも呼ばれる「藍染」は、江戸の昔には日本人にとって最も身近な染め物の一つでした。「正藍染」の着物や帯を着れば、「本物」のジャパンブルーを身にまとうことができますよ!

諏訪家5代目の好風さんが始めた「天然灰汁発酵建ての正藍染」は、6代目の豪一さんにも受け継がれ、『野の花染工房』の代名詞の一つとなっています。

『野の花染工房』では、正藍染のほかにも、様々な天然原料を使用した「草木染」の着物や帯を展開しています。

・藍染

・紅花染

・紫根染

・茜染

・桜染

・サフラン染

『野の花染工房』では、桜染にも特にこだわって力を入れているそうです。

桜は「神聖」なものとされていますので、枝を切って使うことはしません。雪害で折れた枝のみを草木染の原料とします。

枝から抽出された染液に漬け込む温度や時間によって、桜色に染まる糸の濃淡が変わります。

優しい桜色に染まった糸からは、桜餅のような香りがするのだとか。美しく染まった糸は織子さんの手で反物として織り上げられ、着物や帯になります。

貴重な古代織り「しな糸」の帯も

野々花染工房の置賜紬

日本の固有種である「榀(しな)」の木は、その樹皮が古代から織物の原料として用いられてきました。

現在では、新潟県と山形県の一部地域でしか生産されていない貴重な古代の織物です。

『野の花染工房』では、榀の木(シナノキ)の樹皮を糸に織り込んだ「榀糸」の八寸帯を製作しています。

榀糸織の帯は、通気性が良くしゃりっとした手触りも涼し気で、夏用の帯として「着物通」の方々に人気があります。

『野の花染工房』の着物の魅力

天然の「ニュアンスカラー」

天然原料を用いた染物は、染める度に色が変わります。同じ色に染まらないからこそ、染めあがった糸には、化学染料で染めた糸には無い独特な味わいがあります。

草木染を行う職人さんは、「草木から色をいただく」と表現される方も多いようです。

草木染の着物や帯は、自然の恵みに感謝し、大切に思う職人さんたちの気持ちが伝わってくるような、優しい色あいが魅力です。

最近は、若い人たちの間で「ニュアンスカラー」や「くすみカラー」が人気を集めています。日本に古くから伝わる「草木染」は、まさに天然のニュアンスカラーと言ってもいいでしょう。

「自然からいただいた色」で染め上げたふんわり優しい風合いの着物や帯はいかがですか?

「織り」で表現された素朴な柄

野々花染工房の着物

友禅染に代表されるような「後染め」の着物は、織り上がった白生地の上に地色を染めて、様々な柄を描き出します。後染めの着物は、表現の自由度が高く、華やかで晴れがましい雰囲気です。

一方、米沢織の着物は、先に染めた糸を使って柄を織り出す「先染め」です。

経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を使って、巧みに柄を織り出す「先染め」は、素朴な雰囲気が魅力です。

織りによる表現とは思えないほど緻密な「絵絣(えがすり)」という織り方もあります。

「先染め」の特徴である「質実剛健」さは、上杉鷹山公の教えにも通ずるイメージですが、そこに草木染の優しい色合いが加わることで、米沢織特有の魅力が発揮されています。

先染めの着物は、カジュアル向きが基本ですが、パーティーや会食などでお召しになれるおしゃれな訪問着もありますよ。

谷屋呉服店に『野の花染工房』の着物を見に来てください

米沢の野々花染工房

千葉県・香取市の谷屋呉服店では、着物雑誌の特集などでも人気の高い『野の花染工房』さんの貴重な作品を取り扱っております。

優しい色と素朴な柄ゆきがおしゃれな草木染の反物で、自分だけの着物をお仕立てしてみませんか?

『野の花染工房』の着物や帯をご紹介する展示会も予定しております。どうぞお気軽にご来場くださいませ。