
空気が乾燥する季節になりました。
真冬の乾燥は肌やのどへの負担が大きくて厄介ですが、着物のお手入れには最適なシーズンです。
自宅でできる着物のお手入れ方法として、一年に2~3回の「虫干し」がおすすめです。
今回は、「虫干し」をする目的、適した時期や時間帯、具体的な手順などについてお伝えいたします。
着物の「虫干し」をする目的とは?
着物や帯の「虫干し」は、保管中にたまった「湿気」を取り除くために行います。
乾燥させることで、様々なトラブルを予防することができます。
・カビの発生を防ぐ
湿気がたまったままにしておくと、カビが発生しやすくなります。カビは変色やシミの原因にもなります。
・臭いの予防
湿気がたまることで、独特な「カビ臭」が発生することがあります。
一度ついてしまうとなかなかとれません(消臭のための特殊なクリーニングが必要です)ので、予防が大切です。
・虫食いを防ぐ
ウールや正絹、木綿など「天然繊維」の着物は、「虫食い」の被害に合うことがあります。
着物の繊維を食べる虫は、湿気を好みますので、「虫干し」をしてしっかり乾燥させることが大切です。
・トラブルの早期発見
保管している間に浮き出たシミや、変色、カビ、虫喰いなど、トラブルが発生した場合にも、定期的な「虫干し」で早めに発見することができます。
シミなどのトラブルを発見した時には、なるべく早く専門店に相談して、クリーニングやシミ抜きなどのケアを行いましょう。
「虫干し」に適した時期や頻度は?

着物の「虫干し」は、一年に2~3回程度行う必要があります。
できれば3回を目安に行いたいところですが、忙しくて時間が取れない場合には、2回でもいいでしょう。
虫干しに最適なのは、湿気が少なくなる季節です。
昔から、一年のうちで虫干しに良いとされているのは以下の時期です。
・1~2月:「冬」の乾燥シーズン
・7月上旬:梅雨が明けて、晴れが続く時期
・11月頃:秋晴れの季節
ただし、近年は、温暖化の影響で、従来通りの気象・天候ではなくなってきています。
上記はあくまでも「目安」と考えて、湿度や天気を見て判断するといいでしょう。
・湿度が低い時期(40~60%)
・気温20度以下が望ましい
・よく晴れた日が2~3日続く
・午前10時~午後3時(気温が高く湿度が低い時間帯)
虫干しのやり方
虫干しに適した場所
・風通しがよく、直射日光が当たらない場所(室内でも屋外でも良い)
・裾がつかないように着物を掛けられる場所
虫干しに必要な物

・着物ハンガー
洋服用のハンガーではなく、袖までしっかり広げられる「着物ハンガー」を用意しましょう。
・たとう紙
着物を保管しておく「たとう紙」は、着物の代わりに「湿気」を吸っています。
消耗品ですので、虫干しの機会に新しい物に交換するようにしましょう。
・着物ブラシ
着物の表面についたホコリを落とすのに使います。専用のブラシがない場合には、きれいなハンカチでも代用できます。
・扇風機や除湿器
短時間で効率的に乾燥させるために、扇風機や除湿器を利用するのもおすすめです。
虫干しの手順
①着物を「着物ハンガー」にかけて広げる
②着物ブラシで優しくブラッシングして、チリ・ホコリを落とす
③汚れやシミなどのチェック
④3~4時間程度、風通しの良い場所で「陰干し」
⑤十分に乾燥させたら、着物ハンガーから取り外してたたむ
⑥新しい「たとう紙」に入れて、桐タンスなどに保管する
着物の保管方法

定期的な「虫干し」だけでなく、普段からのお手入れや保管の方法にも気を付ける必要があります。
着物の一番の大敵は「湿気」ですので、湿度管理に注意しましょう。
・たとう紙
和紙製の「たとう紙」は、着物にホコリがつくのを防ぐだけでなく、湿気を吸い取ってくれる役割があります。
・桐たんすや桐箱
桐材には、高い「調湿」機能があるため、昔から着物の保管に利用されています。
近年は、洋室に置いても違和感のないモダンなデザインの桐タンスもあります。
・着物収納袋
留袖や振袖、訪問着など、着用機会の少ない高級着物の場合は、防虫・防カビ・防湿機能のある「着物収納袋」を活用するのもおすすめです。
・風通しのよい部屋
着物を収納するタンスや収納箱は、家の中でも、湿気がたまりにくく風通しの良い部屋に置くようにしてください。
雨の日や湿度の高い日には、着物の出し入れをひかえましょう。
よく晴れて乾燥した日に、引き出しを開けて空気を入れ替えるだけでも、湿気を飛ばす効果が期待できます。
・着用後は必ず「陰干し」をする
着物を着用した後は、すぐにタンスにしまわないで、数時間~一日程度、着物ハンガーにかけて「陰干し」をしましょう。着物ブラシで軽くホコリを落としてから収納します。
シミや汚れがついていないか、しっかりチェックするのも忘れずに。
着物の「トラブル」を発見した場合
虫干しや着用の際に、着物の変色やシミ、虫喰いなどを発見した場合は、なるべく早めに専門店に相談してお手入れを行いましょう。
時間がたつほど、汚れが落ちにくくなります。
谷屋呉服店では、着物や帯の「お手入れ」のご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ

大切な着物を長持ちさせるために、適切な保管方法と定期的な「お手入れ(虫干し)」が必要です。
一年に2~3回は、風通しの良い場所に着物を「陰干し」して、たまった湿気を飛ばしましょう。
湿度が低い時期で、よく晴れた日が2~3日続いた時がチャンスです。
シミや汚れなど、「トラブル」を発見した場合は、お早めに専門店にご相談ください。
