湘南友禅「花煌路―HANAKOURO」

湘南友禅「花煌路―HANAKOURO」

染色アーティストが集う湘南・茅ヶ崎にある「アトリエ内田」は、日本画をベースにした美しい染色作品で知られています。

ぼかし染めやローケツ染め、摺り友禅など繊細な手作業で染められる「湘南友禅」は、市場に流通する作品数が少なくとても貴重な逸品です。

アトリエ内田の代表的なブランド「花煌路(はなこうろ)」は、花弁の一枚一枚を「摺り友禅」の技法で表現しています。

神奈川県茅ヶ崎「アトリエ内田」の湘南友禅

湘南友禅の工房「アトリエ内田」のある神奈川県茅ヶ崎

神奈川県南部の相模湾沿岸一帯は「湘南地区」として知られています。

美しい海岸を望む湘南地区は、気候・景勝に恵まれた地域として、昔からマリンスポーツや観光・保養地として人気です。

染色作家・内田芳光氏が主宰をつとめる湘南友禅の工房「アトリエ内田」は、染色アーティストが多く集う湘南・茅ヶ崎エリアにあります。

湘南友禅は、茅ヶ崎海岸のほど近く、閑静な住宅街にあるアトリエで製作されています。

湘南友禅は、一般的な友禅染めの技法と異なり、糸目糊(いとめのり)を使わない「摺り友禅」の技法を用いるのが特徴です。

なお、加賀友禅や京友禅に代表される伝統的な「友禅染め」では、柄の輪郭線に「糸目糊」を置くことで、隣り合った色が混ざらないように防染する方法が基本です。

糸目糊を置いた輪郭線は、糊を洗い流すと白い線として残ります。振袖などでは、糸目糊の線の上に「金駒刺繍」を施す場合もあります。

一方、摺り友禅では、糸目糊を置かず、地染めをした生地の上に直接柄を染めて行きます。

渋紙(はり重ねた和紙に柿渋を塗って乾かしたもの)で作った「型紙」をくりぬき、刷毛で染料や顔料を摺り込むことで柄を染め出します。

糸目友禅の場合には、染料の濃度で柄の濃淡が決まりますが、摺り友禅では、摺りこむ回数で濃淡を表現できます。

湘南友禅は、独特な蝋タタキやぼかし染めなどで「地染め」を行った後、摺り友禅や手描き染めで繊細な柄を染め上げます。

湘南友禅に描かれるのは、四季の草花のほか、湘南の海をイメージさせる水面や波模様、水辺の風景のほか、ステンドグラスや砂漠のキャラバンなど異国情緒ただようモチーフもあります。

湘南友禅「花煌路―HANAKOURO」

「摺り友禅」や手描きで模様を描きだす湘南友禅では、たとえ同じ型紙を使ったとしても全く同じ作品を二つと作ることはできません。

すべての作品が丁寧な手作業による「一点物」であり、とても貴重です。

そのため、実際に市場に流通する作品数そのものが極めて少なく、「湘南友禅」をご存知の着物ファンにとって、憧れの逸品になっています。

人気ブランド「花煌路(はなこうろ)」

「花煌路―HANAKOURO」は、湘南友禅・アトリエ内田の代表的なブランドの一つです。

花煌路の柄は「摺り友禅」の技法で染めるため、糸目糊を置かずにダイレクトに柄を置いて行きます。

まずペーパーデザインで全体の構図や色彩を決め、選りすぐりの上質な生地に水蒔糊ボカシ技法や蝋タタキで「地染め」を施します。

地染めの独特な優しい色味やグラデーションは、「花煌路」の特徴の一つになっています。

次に、渋紙やフィルムに大小さまざまな図柄(花びらのモチーフなど)を描き、デザインカッターでくりぬいて「型紙」を作ります。

小さな刷毛を使って、くりぬいた場所に染料や顔料を摺り込むことで、丁寧に柄を染めて行きます。

花煌路の作品では、着物一枚に約一万枚もの花弁が描かれることもありますが、その花びら一枚一枚ずつに、こうした手作業を3~4工程繰り返して染めています。

この丁寧な作業が作品に立体感を生み出し、花煌路特有の可憐な作風になっています。

枝や茎などの線は筆で手描きします。

湘南友禅「花煌路―HANAKOURO」

日本画をベースとする湘南友禅は、「水彩の印象画」のような淡く美しい作風を特徴としています。

さらに、パール系の金・銀泥で花の輪郭に輝きを加えたり、部分的に刺繍を施したりする「仕上げ作業」を行います。

パール系の金・銀泥で花の輪郭に輝きを加えたり、部分的に刺繍を施したりする「仕上げ作業」

摺り友禅の技法では、一般的な「糸目友禅」の技法とは異なり、染め上がった地色を見ながら色を選び、柄を描いていくため、作者のイメージ通りの作品に仕上げることができます。

「花煌路」ブランドの着物や帯は、湘南の海や風をイメージさせる爽やかで優しい彩りが特徴です。

糸目友禅ともまた違ったおもむきのある染め模様は、「水彩の印象画」のような作風とも言われます。

花びら一枚一枚を丁寧な手作業で染め上げる繊細な作品は、染色業界でも高い評価を得ており、着物専門雑誌でもたびたび紹介されるなど、着物ファンの間でとても人気があります。

湘南友禅『花煌路』の着物や帯を谷屋呉服店で

千葉県香取市の谷屋呉服店は、嘉永元年(1848年)創業の老舗呉服店です。

振袖など「晴れの日」の着物のほか、呉服一般を幅広く取り扱っており、販売・レンタルはもちろん、着物のお手入れなども承っております。

店舗併設の写真スタジオでは成人式の「前撮り」や記念日の撮影にご利用いただけます。前結びの着付け教室も開講しており、着物に関することなら何でもお気軽にご相談ください。

谷屋呉服店では、全国各地の名品をご紹介する展示会も定期的に開催しています。

今回ご紹介した「湘南友禅・花煌路」の作品を一堂に会する展示会も開催予定です。

「摺り友禅」の技法で丁寧に染められた花煌路の作品はとても貴重なため、ほとんど市場に出回ることがありません。

谷屋呉服店の展示会は、花煌路の作品を間近でご覧いただける貴重なチャンスになりますので、その折にはぜひお立ち寄りくださいませ。