
『一竹辻が花』(いっちくつじがはな)は、染色家の初代・久保田一竹が、「幻の染」と言われていた辻が花染めを独自の製法で復興させたものです。
絞り染め・ぼかし染めによる鮮やかな色彩や、ダイナミックな構図などを特長とする「一竹辻が花」は、美術品・芸術品としての評価も高く、国内はもとより世界的にも有名です。
現在では、初代から技術と製法を受け継いだ久保田悟嗣氏が、二代目・久保田一竹として一竹工房・一竹辻が花の作品を発表しています。
今回は、現代最高峰の染色作品とも言える『一竹辻が花』の魅力についてお伝えいたします。
初代久保田一竹と『一竹辻が花(いっちくつじがはな)』
初代・久保田一竹(くぼたいっちく)の来歴

初代・久保田一竹は、1917年(大正6年)東京神田生まれの染色家です。
14歳で染色の道に進むと、19歳で早くも独立を果たしました。
20歳の頃に博物館で見た室町時代の「辻が花染め」に魅了され、その後の生涯をかけて独自の辻が花染めを完成させることとなります。
その道は決して平坦なものではなく、出征・シベリア抑留という苦難の時代も経験されています。
復員後の1948年、ようやく念願の「辻が花」の研究に着手し、1961年に「一竹工房」を開設しました。
1977年、久保田一竹氏60歳の折に開催された「第一回一竹辻が花展」はたいへんな評判を呼び、その後国内外で数多くの個展が開かれています。
一竹の着物や帯は、実用的な衣服としてだけではなく、美術品・芸術品としても高く評価されています。
「一竹辻が花」の名声と評価は国内にとどまらず、その功績がたたえられ1990年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受賞しています。
1994年に開設された一竹美術館(山梨県富士河口湖町)では、初代・久保田一竹の代表作を見ることができます。
独自の技法『一竹辻が花』

「辻が花染め」とは、絞り染めと手描き(墨絵)、刺繍、摺り箔(すりはく)などを組み合わせた染色技法のことを表します。
伝統的な「辻が花染め」は、安土桃山時代から江戸初期にかけて盛んに製作されました。現在でも、主に博物館や美術館の所蔵品として、当時の「小袖」などを見ることができます。
江戸時代になると、より緻密で多彩な表現が可能な「友禅染め」が開発されたため、辻が花染めは衰退していったというのが定説となっています。
その後、辻が花染めの技術の継承が完全に途絶えてしまったため、長らく「幻の染」とされてきました。
昭和初期に入ってから、複数の染色家が「辻が花染め」の復興に挑み、現代の辻が花染めへと繋がっています。
完全に当時の染色方法を再現することは困難なため、それぞれの工房独自の製法で再現されているそうです。
初代・久保田一竹による「一竹辻が花」も、伝統的な「辻が花染め」を再現したものですが、当時とは異なる独自の技法で製作されています。
一竹辻が花は、「度重なる重ね染め・重厚な絞り・独創的デザイン及び色調」を特徴としています。
草木染めである伝統的な辻が花染めとは異なり、一竹辻が花では化学染料を用います。これにより縫い絞った部分の染色コントロールが容易になったことで、独特の華やかな色彩を持つ辻が花染めが生まれました。
ダイナミックな意匠も一竹辻が花の特徴の一つです。
繊細なぼかし染め・絞り染めの技法と、大胆で独創的なデザイン・色彩が組み合わさって、唯一無二の世界観を生み出しています。
さらに、一竹工房の着物は、生地も別織(特注品)の上質かつ重厚な物が使用されています。
生地・意匠・染めのどれをとっても「最高級」の着物であると言えるでしょう。
一竹工房の着物と帯

初代・久保田一竹は、2003年(平成15年)に、惜しまれつつこの世を去りました。
一竹工房と一竹辻が花の製法は、初代の長男である久保田悟嗣氏が引き継ぎ、二代目・久保田一竹として、着物や帯を製作しています。
生前の初代から直接受け継いだ技法や精神はそのままに、現代の感性を採り入れた色彩・デザインは、着物ファンの憧れの逸品となっています。
一竹工房の着物や帯は、フォーマル(礼装)を中心に、カジュアル向きから和装小物まで幅広いラインナップが揃っています。
・訪問着
・留袖
・色無地
・小紋
・袋帯
・名古屋帯
・和装小物
お子様のお宮参りや七五三、入学式・卒業式のお母様の装いや、結婚式、各種パーティーなどには、訪問着と袋帯のスタイルがおすすめです。
一目でわかる上質さと品格が感じられる一竹工房の着物と帯は、お手元にあるととても重宝します。
「最高級」の着物・帯として、親から子へ世代を超えて伝える家宝になることでしょう。
「辻が花」特有の愛らしい花模様が描かれた名古屋帯は、観劇やランチ会、同窓会など、いつもの着物姿をより華やかに見せてくれます。
コートやショールなど、より気軽に採り入れられる和装小物もいかがでしょうか。
鮮やかな色彩は、身に着けるだけでお出かけが楽しみになりそうですね。
一竹工房の着物・帯を谷屋呉服店で

千葉県香取市にある谷屋呉服店では、全国各地から名品・逸品をとりよせた展示会を定期的に開催しています。
今後、一竹工房の製品を一堂に会する展示会も開催予定となっております。
貴重な着物や帯を間近でご覧いただけるチャンスですので、その折にはぜひ会場へお立ち寄りくださいませ。
お仕立てやコーディネートのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。