【知っておきたい着物TPO】季節に合わせた着物の柄

着物や帯には、四季の花や植物が描かれていることが多いですね。

「この柄はどの季節に着たらいいの?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

あまり神経質になる必要はありませんが、季節感を意識することで、着物のおしゃれはもっと楽しくなります。

季節ごとにぴったりな着物の柄についてお伝えいたします。

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着物の柄は「季節感」も意識して

俳句に季語があるように、日本の文化に共通する美意識として、「季節感」はとても重要な要素です。

着物や帯にも、四季の草花や自然、風物詩などがよく描かれます。

「季節はずれ」の柄を選ぶとマナー違反と言われたり、眉をひそめられたりしそう…とご心配な方もいらっしゃるかもしれません。

実際には、それほど過剰に神経質になる必要はありませんので、どうぞご安心ください。とはいえ、「季節感」を意識することで、着物や帯を選ぶ楽しみが広がるのも事実です。

例えば、着物や帯に描かれているのはどんな花で、いつ頃咲くのかしら?とちょっと気にしてみるだけで、新しい発見もありそうです。

なお、着物の世界では、基本的に「季節を先どり」するのがおしゃれ・粋とされています。

例えば、美しい桜模様の着物や帯は、桜が満開になるよりも前の、蕾がふくらんだ頃や咲き始めの頃に着たくなります。

季節ごとにおすすめの柄についてまとめましたので、ぜひご参考になさってみてください。

「春」におすすめの柄

「春」におすすめの花柄の着物

・桃、菜の花、たんぽぽ、すみれ、牡丹、木蓮、チューリップ、桜、藤

春と言えば、桜に代表される「花」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。

それぞれの花によって「開花時期」が異なりますので、開花よりも少し前か咲き始めのタイミングで着るのがおすすめです。

このほか、春らしい柄として、「霞(かすみ)」や、「ひな祭り」、「蝶」の柄などもおすすめです。

「夏」におすすめの柄

「夏」におすすめの花柄の着物

・紫陽花、朝顔、撫子、秋草

盛夏の着物は、浴衣や薄物(絽や紗)と決まっていますので、もともと夏向きの柄ゆきで作られています(そのため柄の季節感で悩むことはありません)。

ちょっと意外なところでは、雪の結晶を表す「雪輪」文様の着物や帯は、涼しく見せるためにあえて夏に着るのも粋な演出になります。

少し頭を悩ませるとしたら、「ひとえ着物」の時期に着る着物の柄ではないでしょうか。

ひとえ着物は、盛夏を挟んで初夏(6月)と初秋(9月)に着用します。

「うちわ」「花火」「紫陽花」「朝顔」など、夏っぽいイメージの柄なら6月に着用するのがおすすめです。

「秋草」「紅葉」など秋らしい柄の着物や帯は、9月に着用するといいでしょう。

「秋」におすすめの柄

「秋」におすすめのイチョウ柄の着物

・紅葉、菊、銀杏、ススキ、萩、葡萄、柿、栗

秋に咲く花のほか、「実りの秋」をイメージさせる果物などもおすすめです。

近年は、暦の上では秋になっても厳しい残暑が続きますが、夏っぽい柄をいつまでも着るのはあまりおすすめしません。

一足先に「秋」の柄を身に着けて、涼しい秋風を感じたいですね。

「冬」におすすめの柄

「冬」におすすめの草柄の着物

・椿、梅、南天、橘、松、竹

冬に咲く花は多くありませんが、椿や梅は代表的な冬の花です。

クリスマスシーズンには、ヒイラギやクリスマスリースの柄などもおすすめです。

お正月には、松竹梅や干支の文様、凧や独楽、羽子板の柄などはいかがでしょうか。

このほか、冬の終わり頃には、うぐいすやネコヤナギ、水仙など、春の訪れをイメージさせる柄もいいですね。

季節に関係なく着られる柄

季節に関係なく着られる柄の着物

シーズンごとにおすすめの柄をご紹介しましたが、実際には、「季節に関係なく着られる柄」もたくさんあります。

・吉祥文様

吉祥文様(きっしょうもんよう)は、「縁起が良い」とされる柄のことです。

振袖や留袖など「晴れの日」の着物によく描かれる柄です。

・幾何学文様

ウロコや青海波(せいがいは)、亀甲、市松などの幾何学文様は季節を問わず着用できます。

・有職文様(ゆうそくもんよう)

吉祥文様・幾何学文様と重なる柄も多いですが、主に平安時代以降の公家社会で、意匠や調度に用いられた伝統的な文様です。

「七宝」「たてわく」「花菱」などがあります。

・文様化された花

「モチーフ(文様)」として描かれた花柄は、季節を気にせず着用することができます。

反対に、枝付きなどで「写実的」に描かれている場合には、季節に合わせて着るのがおすすめです。

・「四君子(しくんし)」文様

「蘭・竹・菊・梅」を組み合わせた柄で、中国から伝わった吉祥文様です。4つの植物がそれぞれ四季を象徴しているため、一年を通して着ることができます。

・四季草花文様

着物や帯の柄には、あえて季節を限定しないように、四季の草花が描かれていることがよくあります。一年を通して着用できますので、便利で使い勝手の良い柄です。

まとめ

着物や帯の柄選びの時に「季節感」を意識することで、着物のおしゃれをもっと楽しむことができます。

着物を着るようになると、「季節のうつりかわりに敏感になった」「自然と四季の草花に詳しくなった」と感じられる方も多いようです。

基本的には、少しだけ「季節を先どり」するのが良いとされています。

実際には、季節に関係なく着用できる柄が多く、あえて一年中着られる柄づけになっている着物もあります。

TPOやマナーを気にしすぎるあまり、過度に神経質になる必要はありませんので、安心して着物のおしゃれを楽しんでください。