
近年の日本では、4月ともなると汗ばむ陽気も増えてきます。
日本には季節ごとの「衣替え」という習慣がありますが、これまでの常識やマナーに基づく選び方では温度調節が難しい場面もありそうです。
そのため、最近では、裏地の無い「ひとえ着物」を着用する期間が長くなる傾向にあります。
初夏と初秋に活躍する「ひとえ着物」について、着用時期やコーディネートのコツをお伝えいたします。
「単衣(ひとえ)着物」とは?
着物の仕立て方には、裏地つきの「袷(あわせ)仕立て」と裏地なしの「単衣(ひとえ)仕立て」があります。
春・秋・冬の寒い季節には、裏地つきで保温性の高い着物を着用し、初夏や初秋の過ごしやすい季節には裏地なしの着物で軽やかに装います。
「ひとえ着物」は、裏地なしでも着られるように、ある程度しっかりした生地で作られるのが一般的です。
基本的には透けない素材で作られており、さらりと着こなせる質感の生地がおすすめです。汗で肌にはりつかないように、少し凹凸のある生地も人気です。
なお、盛夏のシーズン(7月・8月)には、薄手の生地で透け感のある「夏着物」を着用します(絽・ろや紗・しゃなど)。
ひとえ着物の季節は?

「衣替え(ころもがえ)」の時期は、ある程度「決まりごと」として認識されているかもしれません。
ひとえ着物の季節は、6月(初夏)と9月(初秋)と教えられた方も多いと思います。
ところが、近年の温暖化によって、従来の「衣替え」の決まりに従うのが難しくなってきました。
衣替えは、本来、季節に合わせて過ごしやすい衣服を選ぶためにあります。
また、適切な「体温調節」のための衣服選びには、個人差もあります。
そのため、最近では、「ひとえ着物」を着用する期間が長くなる傾向にあります。
5月のゴールデンウィーク頃にはかなり暑い日もありますので、ひとえ着物を着ても問題ありません。もちろん、それほど気温が高くない日には、袷着物を着用できます。
6月は従来通り「初夏のひとえ着物」を楽しむ季節です。
7月・8月の「夏着物」シーズンが終わったら、9月の「秋ひとえ」の季節が始まります。
一般的には、9月9日の「重陽の節句」を過ぎると、暦の上での「秋」になります。
これ以降は、残暑が厳しくても、夏着物を着続けるのはおすすめしません。
着物の世界では、「季節の先どり」に対して寛容ですが、季節遅れは「野暮」とされています。
ただし、「秋ひとえ」のシーズンは伸びている傾向にあります。10月でも残暑が厳しい日が多いので、無理に袷着物を着るのではなく、ひとえ着物を着用して大丈夫です。
ただし、結婚式やお茶席などフォーマルなシーンでは、従来の「衣替え」の習慣に従うのが無難です。
初夏と初秋の「ひとえ着物」コーデ

ひとえ着物の季節は、真夏を挟んで、6月がメインの「初夏のひとえ」と9月がメインの「秋ひとえ」に分かれています。
ひとえ着物のコーディネートは、それぞれの季節感に合った装いにします。
これから夏に向かう季節と、冬に向かう季節では、だいぶ気分が変わりますので、「季節を先どり」する選び方がおすすめです。
初夏におすすめの「ひとえ着物」コーデ
淡い色味や涼し気なカラーで、初夏を爽やかな気分にしてくれる着物や帯がおすすめです。
紫陽花など初夏の草花柄や、すっきりとした幾何学柄などもおすすめです。
初夏のひとえ着物には、絽(ろ)や紗(しゃ)など夏用の帯をコーディネートします。帯揚げや帯締めなども夏帯用を選んでください。
秋におすすめの「ひとえ着物」コーデ
秋のひとえ着物は、少し深みのある落ち着いた色味がおすすめです。秋草や菊、紅葉など、秋を連想させる柄を選ぶとおしゃれです。
帯や小物類は、9月のうちは夏用の物を合わせてまだ涼し気に、10月に入る頃からは袷着物用をコーディネートするといいでしょう。
ひとえ着物と夏着物の兼用生地も

ひとえ着物の着用シーズンが伸びたことで、着物メーカーも顧客の需要にこたえる商品づくりを進めています。
薄手の生地を得意とする織元は、ひとえ着物と夏着物に兼用できる生地や、5月~10月頃まで違和感なく着られる柄も開発しています。
本来、ひとえ着物の季節に「透け感」のある着物は着用しませんが、中に着る襦袢の色によって「透け感」が目立ちにくくなります。
盛夏の時期には、逆に「透け感」を強調する襦袢を合わせて、涼し気な着こなしを楽しむことができます。
これまで、ひとえ着物と夏着物はそれぞれ着用できる期間が短く、購入をためらうケースもあったかもしれません。
温暖化により、25度を超える「夏日」が増えました。
快適な着物ライフのために、新しい時代の柔軟な「衣替え」にぜひ挑戦してみてください。

裏地のないひとえ着物は、着付けも簡単で、気軽に着られる優れものです。
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