国内最北の織物産地として知られる米沢地方の織元『齋英織物(さいえいおりもの)』は、大正12年創業の工房です。
創業以来、先染めの絹織物を一貫生産している織元です。平成18年には、経済産業大臣指定伝統工芸品の『置賜紬』伝統織物工場として認定されています。
紅花など草木染めの糸で織りあげた着尺や帯、貴重な「黄金の繭」のみを使用した「月光着尺」など、齋英織物こだわりの着物や帯をご紹介します。
伝統的工芸品『置賜紬(おいたまつむぎ)』
「伝統的工芸品」とは、伝統工芸産業振興に関する法律に基づいて、経済産業大臣によって指定された工芸品のことです。
2024年10月時点で243品目があり、『置賜紬』は1976年に指定されています。
『置賜紬』は、山形県南部に位置する置賜地方の「米沢・白鷹・長井」地区で生産される織物です。
置賜地方は江戸時代初期から青苧(あおそ)や紅花など織物の原料が栽培されていました。その後、養蚕も盛んに行われるようになったことで、青苧を原料とする麻織物から絹織物産業に移行しました。
置賜紬は、3地区それぞれに異なる技法で織物が生産されています。
米沢は、江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山公による織物産業振興に始まり、現在に至るまで国内有数の織物産地として知られています。
米沢織は、紅花をはじめとする草木染めが特徴的ですが、織元それぞれのこだわりの「ものづくり」が魅力の一つになっています。
『齋英織物』のものづくり
大正12年創業の齋英織物は、250年の歴史を持つ米沢織としては比較的新しい織元です。
創業当時から100年余り、一貫して先染めの絹織物を生産してきました。
「先染め」とは、先に糸を染めてから織り上げるものを言います。これに対して、白糸で織った「白生地」の反物に後から柄を染めるのが「後染め」です。
紬の織物は、その多くが「先染め」の製品です。
米沢織は、紅花その他の天然植物染料を使った「先染め」が特徴です。
齋英織物では、紅花などの草木染めの糸で織り上げた生地で、男物・女物の着物や帯を製造しています。
また、齋英織物の看板商品とも言えるのが、貴重な黄繭のみを使用した「月光着尺」です。
産地でも珍しくなった木製織機を使っているのも、齋英織物のこだわりの一つ。
糸に優しい木製織機で、「織り手のぬくもりが伝わる・着る方を優しく包む」着物をつくっています。
黄金の繭『月光着尺』

齋英織物の看板商品とも言えるのが、貴重な国産の黄繭のみで織り上げられた『月光着尺』の着物です。
絹織物の原材料となる繭と言えば、真っ白なイメージがあるのではないでしょうか。
織り上げたときに真っ白な生地になるように、絹織物のための養蚕業では白い繭をつくる蚕が飼育されてきました。
突然変異によってできる黄色い繭はとても貴重でしたが、交配によって黄繭をつくることに成功しました。
齋英織物では、この『黄金の繭』(商標登録)のみを使って織りあげた『月光着尺』を製造しています。
黄金の繭で織られた着尺は、黄金に輝く糸の美しさもさることながら、軽くて肌ざわりも良いので、単衣の着物におすすめです。

紬の訪問着

訪問着(ほうもんぎ)は、縫い目をまたいで柄がつながる「絵羽模様(えばもよう)」の着物です。
フォーマルシーンで着用する場合には、後染めの訪問着が一般的ですが、カジュアルシーンからセミフォーマルシーンでは、紬の訪問着もおすすめです。
齋英織物では、先染めの紬着尺で仕立てた訪問着を製作しています。
美しい草木染めの糸が織りなす独特なグラデーションカラーは、落ち着いたおもむきで、大人の「粋」を感じさせます。
四寸帯・八寸帯・九寸帯
四寸帯とは、帯幅約18cmの「半幅」の帯のことです。
カジュアル着物に合わせて手軽に結べるので、着物ファンの間では、近年さらに人気が高まっています。
齋英織物の四寸帯は、ぬくもりを感じさせる織り模様と、しなやかな締め心地が特徴です。
八寸帯は、反物の幅が31cm(八寸)ほどで、帯芯を入れずに端をかがるだけで「ひとえ帯」として仕立てます。
小紋などカジュアル着物にコーディネートするのが一般的で、通気性がいいので単衣着物にもおすすめです。
九寸帯は八寸帯に比べてフォーマル感がありますので、普段のお出かけからお茶のお稽古、観劇、パーティーなどにもおすすめです。
齋英織物の帯は、先染めの糸を使った優しい織り模様が特徴です。
シンプルなデザインなのでどんな着物にも合わせやすく、モダンでおしゃれなコーディネートにしてくれます。
糸からこだわった上質な帯は、カジュアルシーンからセミフォーマルシーンまで、一本お持ちになっているととても重宝しますよ。
男性着物・角帯
齋英織物では、紬袴や着尺、角帯などの「男もの」も手掛けています。
男性の着物は無地が基本です。
それだけに生地の色味や風合いにこだわるのが、男性着物の楽しみ方と言ってもいいでしょう。
男性の着物のおしゃれでは、「角帯」にこだわる方も多いのではないでしょうか。
おしゃれな配色が楽しい縞柄の角帯で、男の「粋」な装いはいかがですか?
米沢織の角帯は、しなやかな締め心地も人気です。
齋英織物の着物や帯を谷屋呉服店で
千葉県香取市にある谷屋呉服店では、全国各地の名品を取り寄せた展示会を定期的に開催しています。 今回ご紹介した『齋英織物』製の着物・帯の展示会も予定しております。実際にお手にとってご覧いただけるチャンスですので、ぜひお立ち寄りくださいませ